「技法ではなく心」メルマガ第97回:2014年3月18日
こんにちは、鈴木です。
メルマガを開封して頂き、ありがとうございます。
「技法ではなく心」
先日オープンセミナーの休憩時間に、
参加者(産業カウンセラー)の方から、こんな質問を受けました。
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クライエントの話を聞いていると、
「よく頑張ってますね」って言いたくなるんですけど、
それはダメな対応なんですか?
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その方の質問内容をようやくすると、こんな感じでした。
なぜ、この質問が出てきたかというと、この時の授業内容が元でした。
この時はカウンセラーの応答トレーニングと題して、
実際の逐語記録を元に、参加者全員で、ある場面での応答を作り直しました。
その際に、先ずは、クライエントの一番言いたいことを
押さえた応答を意識するようにお願いしました。
必要最小限の言葉にまとめたものを作って頂きました。
なぜなら、そういう応答の方が、カウンセリングが進展するからです。
また、取り組んでもらった場面は面接の最初の部分でした。
ですから、クライエントの話を先ずはしっかりと確認していくところ。
余計な動きを入れず、そのことに専念してもらう意識で応答を作成してもらいました。
質問が出たのは、その後の小休憩の時間の時のことでした。
先の質問に対して私は次のようにお答えしました。
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クライエントの話を聞いて、あなたが本当にそう感じているのなら、
それを伝えてみる価値はあるかもしれません。
話を聞いて、あるいは話している様子を見て、
心から「ああ・・頑張ってるなあ・・」という実感が出てきたのなら、
それをそのまま言葉にして伝える意味もあるとは思います。
しかし、励ませばクライエントにプラスになるとか、
技法として教わったからという理由で、
それほど実感が伴わないのに「使う」とします。
その場合は、そこに血が通っていないので、
クライエントの心には何も響くものはないでしょう。
そればかりか、下手にやれば、かえって不自然さが漂って、
クライエントが不信感を抱く可能性も出てきます。
そもそも、そうした激励をクライエントが欲していれば別です。
しかし、こちらが技法的に、或は作為的に使いたいだけであれば、
私はお勧めしないですね。
あくまでもクライエントがこちらに伝えたかったことを
しっかりと受け止めることが基本です。
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カウンセリングの種々の技法というものは、
技法のための技法であってはならないと思います。
カウンセリングの技法は、クライエントの精神的回復になるからこそ必要です。
そういう根拠がないまま技法的な対応をしても、クライエントには迷惑なだけです。
例えば「ここで励ましておけば、クライエントは喜ぶに違いない」とか、
「自分の問題についてもっと話し始めるに違いない」といった考えですね。
こういう意図的、作為的な技法の使い方はやめましょう。
一歩間違えば、人をこちらの思い通りに動かそうという発想と紙一重です。
こういう発想では、カウンセリングは必ず失敗します。
クライエントが今、心の中で何を思い、何を伝えたいのか。
それが感じ取れてもいないのに、技法でお茶を濁すようでは、上手くいきません。
私たちカウンセラーは、あくまでも目の前のクライエントと対面しています。
生身の人間を前にしているわけです。
目の前のその人の心は、刻々と移り変わり、目まぐるしく思いを巡らせています。
そういう人間相手の対応ですから、注意や集中は常にクライエントの内面に向けましょう。
そして、カウンセラーであるあなた自身も、自分の実感を大切にして頂きたいのです。
自分の中に実際の存在する感情や捉え方、そこから出発してほしいのです。
頭の知識や固定観念にとらわれず、クライエントを前にして現に今ある感情。
その感情をしっかりと感じ取りながら言葉を投げ返すのが、応答の基本です。
それから、もう一つ今日はお伝えしたいことがあります。
それは、励ますとか褒めるといった技法についてです。
いえ「励ますとか褒めるが、技法的に使われることについて」といった方が正確ですね。
人間というものは、困難に直面したり、精神的に追い込まれたとき。
人からの賞賛や励ましは、実は、それほど力にはならないものなんです。
自分が努力して、ある成果を実感できたとき、
そのことを賞賛されたり励まされたときは、それが力に変わることもあります。
しかし、困難に直面している時や、精神的に参っている時には、
賞賛や励ましというのは、焼け石に水どころか、かえって傷つけることもあるのです。
つまり、賞賛や励ましの危険性に無頓着で、ただ技法だからと使っていたら、
知らない所で人を傷つけることにもなりかねないということです。
また、自分の問題に向き合おうと本気になった人間は、
そのような賞賛や励ましなどには耳を貸しません。
そうした賞賛や励ましを欲しているということは、
まだまだ本気になれていないということです。
本気になった人に「頑張ってますね」と言っても、
「まだまだです」と返されるのがオチです。
なぜなら、本気になったときの人間というのは、
物事を非常にシビアに見極めようとします。
そしてまた、より慎重に行動していこうともするものです。
そういう状態の人に「頑張ってますね」は、あまりピンとこないのです。
こういうことを考えていくと、カウンセラーという仕事は、
本当に人間理解の深さが求められるな・・と思います。
上っ面の知識や、技巧的な技法に終始するのではなく、
本当に心を通わせる「あり方」「感覚」「心構え」などが必要です。
カウンセリング面接は、こうした様々な要素が混在しながら、
心、感情という「動き」の中での対応を求められます。
ですから、カウンセリング面接を成功させるためには、
そうした動きそのものをよくよく熟知していることが必要になりますね。
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