「教えない教育の真髄」メルマガ第5回:2012年2月11日

こんにちは、鈴木です。

 

 

ブログにも書きましたが、

人は成長するために時間が必要です。

 

急激な成長や変化の陰には、膨大な時間や積み重ねがあるものです。

 

 

今日は「教えない教育」「時間」「師匠と弟子」といった意味での

私の胸に深く刻まれているエピソードを書こうと思います。

 

 

私の師匠は吉田哲という人です。

もう故人ですが、臨床の世界に44年いた人です。

 

 

人間的には変わり者でしたし、私は吉田先生の人間性については、

どちらかというと苦手で、好きではありませんでした()

 

しかし、臨床家としては、今も尊敬してやまない先生です。

 

 

吉田先生は、戦後間もなく日本に

ロジャーズのカウンセリングを根付かせた

第一人者であった友田不二男氏の一番弟子でした。

 

友田先生から特別にその能力を買われ、

当時弟子の中でも若手だった吉田先生は、

友田先生に大抜擢をされた存在でした。

 

 

周りの人たちは、吉田先生を「天才的な臨床家」と呼んでいたそうです。

ただ、吉田先生本人は、全く意に介していなかったようですが(^^;

 

 

その吉田先生とお酒を飲んでいる時に、

私が直接聞いたお話をいまから書きます。

 

 

今から30年以上前、吉田先生の兄弟子にあたる

石原文里さんという方が、自分の面接の録音を持ってきて、

仲間で検討会を開いたそうです。

 

 

そしてその面接が、実は凄まじいものがあったようで・・・・

 

 

その1時間の面接が終わって石原さんが

トイレの鏡に映った自分の顔を観ると、

顔がゆがんでこけていたそうです。

 

 

おそらく「ムンクの叫び」みたいな感じだったんだと思います。

 

 

先ず、そこまでの話を聞いて、私は絶句してしまいました。

 

 

一時間で顔がこけて、激変してしまうような面接・・・・

私にはとても想像がつかなかったのでした。

 

 

きっと石原さんという方は、わらにもすがる思いで、

その面接のテープを仲間に聴いて欲しかったんだと思います。

 

 

そして、そのテープを聴きながら、

メンバーで「ああでもない、こうでもない」と検討していたそうです。

 

そう、なかなか明確な方向性が見いだせなかったのですね。

石原さんも、きっと必死に意見を仰いだことでしょう。

 

 

そしてその時、傍らのソファーで、友田先生が、

聞くとはなしにゴロリと横になっていました。

 

 

石原さんは本当に悩んでいたそうです。

 

もう必死にその面接のヒントがないかと、

メンバーと話し合いを続けていたそうです。

 

 

ところが、友田先生は、

あるタイミングでスッと立ち上がったかと思うと、

その面接の録音について、次の一言を残して立ち去ったそうです。

 

 

 

友田先生「一生懸命に聞いている感じがしない」

 

一同   「・・・・・・・・・・・・・」

 

 

それだけ言い残して、友田先生は部屋を後にしました。

一同は言葉も出ませんでした。

 

 

石原さんは当然、納得できなかったそうです。

 

 

自分はあれほどまでに神経をすり減らし、消耗しながら

必死で相手の話を聞いたつもりだった。

 

それなのに、友田先生はなぜそれを、

「一生懸命に聞いている感じがしない」の一言で片づけるのだ?

 

 

当然ですよね。納得できないです。

 

 

でも、石原さんは、その「一生懸命聞いている感じがしない」という言葉を

自分の中で一年半もの間、持ち続けたそうです。

 

 

自分なりにその答えを手に入れるために・・・・

 

 

そして1年半ほど経ったある日、

その友田先生の言葉の意味がわかったのだそうです。

 

 

師匠も師匠なら、弟子も弟子。

 

 

師匠のたった一言を、自分の中で一年半抱え続け、

そして自分で答えを辿り、見つけ出していく。

 

これまたあまりにも凄まじい話だと思いました。

 

 

そして、吉田先生が飲みながら、

私にその話をしてくださったことの意味を考えると、

途端に両肩に重いものがズシっとのしかかってくるような気がしました。

 

 

私は一体どこまでクライエントの話を集中して聞けているんだろうか?

石原さんのように、顔がこけてゆがむほどに、

全身全霊、耳を傾けて聞こうとしているのだろうか?

 

 

そして師匠からもらった言葉の一つ一つを

一体どこまで自分で抱え続け、考え続け、

自分で答えを出そうとしているだろうか?

 

 

そう考えると、本当に本当に自分が小さく、甘く思えました。

 

 

師匠亡きあと、今の私の心境は、その石原さんに近いかもしれません。

師匠から教えられた一言一言は、

今も私の胸のなかでくすぶっている感じです。

 

 

あの言葉の意味はなんだったのか?

なぜ、吉田先生は私にあのような言い方をしたのか?

 

 

師匠からもらったいくつもの言葉が、

今も私の中では疑問のまま、くすぶり続けているのです。

 

 

そう、答えは私が自分で出すしかないのですね。

 

 

友田先生も、吉田先生も、石原さんも、

今はもうこの世にはいらっしゃいません。

 

 

でも、友田先生はロジャーズから学び、

吉田先生と石原さんは友田先生から学んでいく中で、

きっと同様に自分自身で答えを開拓していったはずです。

 

 

カウンセラーという仕事は、ある意味、とても厄介な仕事です。

これほどまでに答えのわからない仕事もないかもしれません。

 

 

でも、それは、クライエントも同様。

 

 

クライエントが答えを探し続ける時間を、

我々は共に尊重し、共に歩き、共に考える。

 

 

せめてそういう面接を続けていきたいものですね。

 



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