「クライエントの『楽になりました』の真実」メルマガ第133回2015年3月6日


「楽になりました」



カウンセリングの中で聞かれるこの言葉。


これはクライエントの言葉です。


クライエントからこうした言葉が聞かれることの意味。


この言葉をどう解釈するかは、カウンセリングを考える上で非常に重要です。


今日はこの「楽になりました」について考えてみます。




以前、あるカウンセラー(仮にBさんとします)が、

こんな話をしてくれました。


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1回目のセッションが終わった後、クライエントの方から


「Bさんの話を聞いて、すごく楽になりましたあ。ありがとうございます。」


と言われたんです。


いろいろ吐き出すことが出来て良かったと。


やっぱり話を聞くって大切ですね。

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さて、この話を読んで、皆さんはどう感じたでしょうか。


正直にいうと、私はこれを聞いて、

この方(Bさん)の姿勢の危うさを感じました。




先ずクライエントは「話を聞いてもらって」とは言っていません。


カウンセラーであるBさんの「話を聞いて」と言っています。


つまり、Bさんが何か言ったことについての感想でもあるわけです。


「楽になった」という言葉が出てくるほど話をしたということは、

ある程度まとまった話をしたのでしょう。


しかも、それが初回の面接で・・・です。




初回というのはクライエントとの関係性もまだ希薄ですし、

相談の対象となる問題についても、まだ把握しきれないことが多いです。


ですから、先ずは話をできるだけじっくりと聞くことが主になります。


私も初回で何かカウンセラーの方からまとまった話をすることは、

例外的なケース以外には、先ずしない動き方です。




続いて気になったのは、このクライエントのテンションです。


「すごく楽になりましたあ。ありがとうございます。」というところですね。


なぜ、このテンションが気になったのか?


実は、楽になるということには、次の3つの種類があります。



1)話したいことを十分に話せて気持ちが少し軽くなる


2)本当の意味で共感的理解をされたことを実感して精神的な負担が減る


3)物事の捉え方が変わることで、精神的に落ち着く



仮に1)だとしても、それは「少し気持ちが軽くなる」程度のことです。


もちろん話を聞いてもらってという経験も必要です。


普段そこまで話ができない人が、今までにない程に話を聞いてもらう。


そういう効果は確かにあります(これをカタルシス効果といいます)




しかし、それは本質的な変化ではありませんので、

実際には「ちょっと軽くなりました」程度の表現になるのです。


そのトーンも決して明るい、力強い感じはありません。




Bさんのクライエントは、かなり明るいトーンで話しています。


ですので、これはカウンセラーに気を遣っているか、

クライエントが軽くなったと「錯覚」している可能性があるのです。


クライエントには、わざわざカウンセリングを受けたのだから、

それなりの代価(成果)を持ち帰りたいという心理があります。


ですので、納得のいかないカウンセリング体験であっても、

「来て良かった」と思いたいという心理が働きます。




我々が注目すべきは2)及び3)の「楽になった」という時です。



2)本当の意味で共感的理解をされたことを実感して精神的な負担が減る


自分の苦しみ、苦痛、葛藤、不安、哀しみ、絶望。


それらをカウンセラーと真の意味でわかち合えたと心から実感できたとき。


クライエントは「一人ではない」「自分のこの感情はおかしくなんかない」と

自分自身を受け容れる準備が出来てくるのです。


そのため、いたずらに自己否定に陥るところから、

自分の中に認められる部分も見つけるようになっていくわけです。


そうした本質的な変化によって精神的な負担が減り、

「軽くなった」感覚を覚えるのです。




大事なことは、こうした本質的な変化を証言するとき、

人は明るい、力強いトーンにはならないということです。


静かに、言葉を慎重に選び、言葉少なに語るものです。




3)物事の捉え方が変わることで、精神的に落ち着く


人が苦しみを覚えるのは、苦しみにつながる「捉え方」をするからです。


その「捉え方」が建設的、現実的になれば、

苦しみも軽減し、視野が広がり、光も指してくるというものです。




ロジャーズのカウンセリングは、

ただ聞いているだけだという誤解をする人がいます。


しかし、なぜ聞くことを重視するかといえば、

それはクライエントの捉え方を変容するためです。


クライエントの自己概念(自分のことを自分がどう捉えているか)や

物事の捉え方、それによる内面的な経験のされ方。


これらがより建設的に、そして現実に即して変化していく。


そのための入り口が傾聴であり、

共感的理解なんだとロジャーズは言っています。




「捉え方が変わる瞬間」というのは、クライエントにとって、

自分の価値観、人間観、そして人生観が変わるほどのインパクトがあります。


しかしながら、人は本質的な変化を経験すると、

その変化を語るときも、実に静かに、そして慎重に語るものです。


ですから、こうした感覚を経験して出てくる「楽になった」は、

決して初回のカウンセリングで出てくることはありません。


まして、明るいテンションで出てくるはずもないのです。




クライエントが本質的な変化を遂げ始めると、

その語りにはある種の重みが出てきます。


混乱と苦痛からまくしたてるように話していた人も、

本質的な変化を経験することで、落ち着きを取り戻し、

自分の内面をより深く見ようという姿勢が出てきます。


その語りは静かで、ゆっくりで、言葉を選ぶ間も生まれ、

カウンセラーの心にも深く響くほどの確かさを感じます。




「やっぱり話を聞くって大切ですね。」と私に言ったBさん。


この発言に、Bさんとそのクライエントの方との間に

私は大きなギャップがありはしないだろうか・・と感じたのです。


なぜなら、Bさんはこの話を「自分の成功事例」として私に話していたからです。




私の師である吉田は、弟子たちの指導の中で、よくこんな言い方をしていました。




「こんなの(この事例)も、世間では成功事例として通用してしまう」




弟子のケースをカンファレンスで検討しているときに、

時折りそんな風に評していました。


吉田はカウンセラーに対しては厳しい姿勢で指導した人間でした。


まあ、今思えばその厳しさは私の中で財産になっているわけですが。




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